日本古来より生活の知恵として、あらゆる場面で用いられてきた『柿渋』が、今再び注目されている。竹や紙、木、布、漁網などの補強、防虫、防腐染料剤などとして古くから使われてきた。柿渋に含まれる多量のタンニンがそれらの効果をもたらしてきた訳だが、近年では化粧品や食品の添加物として用いられる程度であった。
しかし今、柿渋のタンニンパワーが再び脚光を浴びている。京都で100年以上にわたり100%天然の柿渋を製造してきた某メーカーでは最近『塗料としての柿渋の利用が増えてきた』とコメントする。
その製造工程は7〜9月の青い小粒の柿渋を洗浄・破砕して搾汁・ろ過したものに良質の酵母を添加、3〜10日発酵させ、殺菌、オリ引きなどを行って1〜4年熟成・貯蔵させる。その工程はワインのそれと非常に似ているらしい。事実、熟成させて生成したタンニンはポリフェノールの一種で健康に非常に良いとされている。
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この柿渋タンニンはカテキンガレート、ガロガテキンガレート、カテキンといった物質の縮合体で、分子量15,000前後の高分子縮合物、多くのフェノール性のOH基を有しており、例えば塗布されて酸素に触れることにより、高分子の強い膜をつくる。これが古来より物体の保護として多用されてきた柿シブのメカニズム、また抗菌性に非常に優れていることから防腐・防虫効果も発揮する。
「1990年頃、著名な建築家の方が内装仕上げに柿渋を用い、独特の色合いや深味のある仕上がりが注目され、塗料としての利用が再び広がり始めた。そして今、そうした意匠性に加え、健康住宅の仕上げ材としての需要が急速に増えてきた。それ自体が人の健康に役立つといったタンニンパワーは一方で様々な化学物質を吸着する効果も備えている。事実、柿渋を塗ったことでアトピーが治ったという報告も寄せられている」とのことです。
(『日本塗料新聞』から抜粋)
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